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自叙伝

中学生で金銭的に自立

商売のやりとりをいつも見ていたからかも知れない。俺も自分で考えて商売をする
ようになり、中学生の頃にはすっかり金銭的に自立していた。

たとえば京大の農学部がある校舎の近くにイチョウ並木があったが、銀杏が実る季節になると、友達と手分けをしながら、ある者は木に登って銀杏を落とし、それを下で拾う者がいて、洗って袋に詰めていく。それを近くの市場やスーパーに持っていって、「これ買(こ)うて」と売りに行く。そうするとこれがけっこう売れるもんで、1袋で100円をもらっていた。

子どもやから、そのうちどんどん調子にも乗る。他所(よそ)でも売れるはずやと
か言いながら、最後は祇園にたどりついた。ある料亭に持っていったら、スーパーに
売るのと同じグラム数なのに、500円で買ってくれる。それを知っていて、料亭を
訪ねようとしたら、たまたま入口のれん越しに若いお姉ちゃんとおっちゃんがいた。
そこで、売れるんちゃうやろか、ピンとひらめいて話しかけたら、「置いていけ」と。
今度はなんと1000円。一緒にいた7人くらいの友達と、ひっくり返って喜んだ。

物は同じでも、客が変われば高く売れる。そんなことを肌で感じた思い出となった。
そんなんで、俺は中学生のくせに小金を手に入れる術を覚えた。おふくろには毎朝、
「朝飯いらんで」と言って、友達と喫茶店に集まってモーニング。中学生やのに、シ
ナモントーストで、とか言いながらね。

ほかにも手広く商売をしていった。家が京都御所まで自転車でいけるところやった
から、そこにある池にいたカメを網で捕って、ペットショップへ持ち込むということ
もやっていた。確か、1匹200円くらい。池の前には「この池立ち入るべからず」
と立て札を出していて、カメも油断しているんやろう。だからすぐに捕まえられた。
そうして、ズボンの両ポケットにカメを押し込んで歩いていたら、通りがかった警察
官が「お前、タバコ持ってるやろ」と聞いてきたが、ポケットからはカメが出てきた
ということもあった。

また、中学生の頃って、思春期やから大人のエッチな本に興味がわく。でも、買う
のはなかなか勇気いるもの。近くの本屋なんかに買いに行ったら、まず「ぼうずにな
んか売るかいな」って店のおっちゃんに言われる。俺はどうかというと、決してひる
まずに「いやあ、おとうちゃんに頼まれて」と言って粘る。そうやってエッチな本を
手に入れていた。それを今度は、学校へ持っていって友達に貸し出す。

1日50円やと、5日目からは儲けが出るしくみ。さらに2人目以降はまる儲けになる。教室の一番後ろの右奥にあった点検口を貸出場所にして、何組のだれ、と名前を書かせる貸出ノートまで作って管理した。エッチな本も、どんどん増えるお客さんの数に合わせて買い足す。そのうち点検口は、開けたら本がどっさり、という感じになっていった。

また、女子にはクルミで作った人形を売った。クルミを拾って、中身をくり抜いた
中に鈴を入れて、目玉をはりつけて、耳もつけて。これがまた飛ぶように売れた。

どんな人に何を売ったらえんやろかとか、どうしたらもっと売れるんやろかとか、おば
あちゃんやおふくろがやっていたことをそのまま、俺なりに考えてやってたんやと思
う。