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自叙伝

飛び立つ時は向かい風。SPCのトップに立つ(下)

正直言って、俺はこれまでいろんなことを否定してきた。

実はそれが、結果的に自分で自分の首を絞めてきたことに、この当時ようやく気付くことができた。だけど大人になって表面でそれを認めたふりをして逃げるのは俺らしくない。心から認めることが、心の安静につながることを発見した。

損得、勝った負けた、なんでやねんという感情。それらが渦巻くなかで、人生って終わっていくのかもしれない。だからこそ「損得」「勝ち負け」「不合理」に負けない自分づくりが大事なんやと思う。感情が揺れ動いた時、損得に負けてないか、勝ち負けに負けてないか、不合理にやられてないか、というようなことを判断できるようになる。それを時折自分で問うと、コントロールしやすいんじゃないか。戦争はなぜ起こるのか。これも突き詰めていくと、結局「損得、勝ち負け、不合理」に行き着く。そういう概念をSPCで活動しながら気づくことができた。

 

そして理事長時代は、できる限り仲間と過ごし、語らう時間を大切にした。美容業界は、アイムが100人を達成した2003年ごろから取り巻く環境が厳しくなり、淘汰がはじまっていた。人間の体でいえば、薬を飲めばなんとか治るという時代がとうに過ぎ、体質を根本から変えていかないと生き残れない時代に突入しているのだ。

 

SPCは経営者が集っているから、そうした話題にも敏感ではあるが、それでも具体的に対処する一手を打つこともままならず、悩みを抱える仲間が当時も少なくなかった。だから俺は、全国各地に赴き、経営者である仲間の一人ひとりと語らっていった。

任期の2年間で、俺は「全国13の地方統括本部、47都道府県をすべて回る」と宣言したいた。そして、有言実行してみせた。YouTubeにも記録が残っているが、任期の最終日である2013年12月31日には、神奈川の地で多くの仲間とともにカウントダウンをして、最後の一瞬までやり抜いたことは忘れ得ぬ思い出である。

 

組織としては、言いたいことがあったら言える雰囲気にしていきたいとも考えた。
やんちゃなやつを集めて言いたいこと言わせていたら、ある若手の経営者が先輩の批判をしはじめた。それで俺が「ほな、その先輩に直接言えや。今からその先輩のところに行こう」と彼をその先輩のもとへ連れて行き、「今、俺に言うたこと全部言え」と言うと「いやぁ、ちょっと」と口ごもってしまった。「ほな俺が代わりに言うたるわ」と脅したら「いやいや自分から言います」とぼそぼそ言い始めた。

先輩はむちゃくちゃ怒った。「そやけど、あんたも言われて仕方ないところはありますよ」と口を挟んだら、お互い言いたい放題に。それでも思っていることのすべてをお互いが出し切ったから、あとはその2人で飲み直していた。そうやって常に風通しをよくしておかないと組織というものは腐ってしまう。

 

また、各地を回って出会った若手の経営者には、「おまえがやらな誰がやるねん」と期待の言葉をかけていった。謙遜する人、笑って済まそうとする人もいたが、どこかしら「そうかな」とその気になってくれていると思う。ちょっとしたことではあるが、その気になる人間が一人が増えると、徐々に組織が活性化していく。そして全体の士気や意識が向上していくのだ。

 

一つ厳しいことを言えば、近年はサムライみたいな奴がずいぶん減ってしまった。
SPCは自分の商売にとってプラスになることだけを教えてくれる場でも、何かがもらえる組織でもない。もっと高い志を持って、切磋琢磨できる仲間が集う場になっていくよう、自分も挑戦をし続けていく決意だ。